■10

 一行は峠にさしかかった。だが、そこには奴らが待ち受けていた。
 「へっへっへ」
 「くっくっく」
 「ひゃっはっは」
 オルウェンの町を出る時に会ったチンピラ達だった。
 「そんな、あの時たしかに全員とも黒こげにしたのにっ」
 「全身ヒールか何かを使って回復したんでござろう。来る!」
 「よし、私に任せろ!」とライト。呪文詠唱を開始する。
 「フルバクーラバクラバクラドムラドム!」
 爆炎球の呪文!
 「待って、その呪文、威力が有り過ぎるっ」とアリア。
 だが、時既に遅し。巨大な炎の球体が、下方のチンピラ達に直撃した。
 「「「ぎにゃー」」」
 轟音!
 爆風!
 熱波!
 一瞬で焼き尽くされるチンピラ達。それはそれで良いとして・・・その衝撃で、雪崩が起こってしまった!
 それはまさに雪の波!
 轟音とともに押し寄せて来る雪。人為的に引き起こしてしまったとはいえ、自然の猛攻に、アリア達冒険者はひとたまりもなかった。

 それは一瞬の事だったが、アリアにはスローモーションで見えた。
 父さん、母さん。私、死ぬのかな。ジン・・・!

 そしてアリア達は雪に飲まれた。彼女達冒険者の冒険はここであっけなく幕を閉じた。
 ・・・かに見えたのだが。
 ぱちぱちぱち。
 火の爆ぜる音。暖かさに反応したアリアは、目を開いた。
 と。
 「良かった。目覚めたでござるな、アリア殿」
 うわー、うわーっ、近い近い近い!
 ジンの顔のどアップに、どぎまぎしてしまうアリア。
 「ふむ」
 アリアから少し離れるジン。
 ジンはアリアの上半身から下半身に目をやり、また顔に視線をやって、一言。
 「見た所、外傷は無いようでござるな。良かった良かった」
 ジンは、心底ほっとした様であった。心配してくれたんだ・・・当たり前か。
 アリアはかるく頭を振ると、現状の把握に勤めた。
 「ここは?」
 「ヒララギ山にある、大洞窟の中でござるよ」
 なるほど。風も入って来ない様だ。洞窟の中、たき火が燃えていた。
 ・・・アリアには、脇を見るゆとりが生まれた。
 見れば、ぐったりしたダレイド、ライト、オードの姿があった。
 「大丈夫。皆、気を失っているだけでござるよ」
 と、ジン。その言葉に安心したアリアだったが、ジンの後ろに、フロストの巨大な姿が見えた。
 「っ、ジン、後ろ!」
 慌てるアリアに対し、ジン。
 「ああ、薪をとって来てくれたのでござるよ」
 落ち着いたもんである。




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