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 「あいや、待たれい、ダレイド殿。この依頼、あくまでレドシラを確保するのが目的の筈。障害となるならば排除しなければならないが、あくまでレドシラの確保、運搬が第一でござろう」
 「そうだ、ジンの言う通りです。ここはひとつ、静かにこの場を離れ、下山するのです。無用な戦闘は避けた方が無難です」と同意するライト。
 「し、しかしっ・・・この機会を逃せば」なおも渋るダレイド。
 「レベッカ殿のご病気を、治すのでござろう?」
 「反撃を食らって帰れなくなる可能性だってあります」
 「ですが!」
 「何よりもまず、薬草を届ける事が先ですよ。人一人の命がかかっているんですから」
 「・・・いえ、そうですね。どうも私は頭に血が上っていた様だ。すいません。このまま、下山しましょう」
 どうやらダレイドも落ち着いてくれた様だ。

 一行は背後をオードに見張らせつつ、下山していった。
 ざっくざっく。
 「(一時はどうなるかと思ったわよ。ジン、ありがとう)」
 「(いや、大した事ではござらぬ。それより、このまま見逃してくれるかどうか・・・)」
 「(え、どういう事!?)」
 「(奴は、あのフロストは、とっくにこちらに気付いているのでござるよ)」
 「ええっ!」
 「どうした、アリア?」とライト。
 「どうかされましたか?」と依頼人ダレイド。
 「いえ、何でもありませんっ」
 思わず大声を出してしまったアリア。背後のオードを見つめる。
 「・・・・・・っ」
 果たして無事にオルウェンの村に帰れるのだろうか?




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