■7

 ざっくざっくざっくざっくざっくざっく。

 話題がなくなった。
 一行は、無言で雪原を進む。
 山の林の間をぬって進み、雪化粧を施された森を抜けた。
 どれ程歩いてきたのだろうか。そろそろ気が遠くなって来ていた。
 そんな時、依頼人ダレイドが沈黙を破った。
 「もうすぐですよ、皆さん」

 そして。
 「あった。レドシラだ! これでレベッカは助かるっ」
 薬草が植わっているのを見つけたらしい。
 一行はついにレドシラの群生地にやってきたのだ。
 レドシラは、積雪の間から、天に向かって尖った葉と茎を伸ばし、青い花を咲かせていた。

 「綺麗な花でござるな」とジン。
 「何か、繊細な感じがするわね」とアリア。
 もうミッションは成功したも同然。その採取はダレイドにまかせ、一行はそこで休憩を挟み、下山の準備を始めた。
 と。オードが山の更に上の方に、巨大な影が動くのを発見した。

 「あ、まさか」
 影は四肢を持ち、人間の様に直立二足歩行していた。
 長い体毛に被われ、とても巨大な体つきをしていた。
 「ふっ、フロストでやんすっ」
 「何?」
 「何だって?」
 動揺する面々の中、熱くなっている人が一人いた。依頼人のダレイドだ。
 「やはり現れたか、フロスト。・・・皆さん、一仕事してもらう事になりそうですよ」
 「一仕事って、ダレイドさん、フロストに攻撃を仕掛けるつもりですかっ?」とアリア。
 「無謀でやんす」とオード。
 しかしダレイドはエキサイトしてしまっている。
 「奴は、父の敵は、あそこにいるのです。今は幸い、奴はこちらに気付いていない様子。アリアさん、ライトさん、魔法による遠隔的な奇襲攻撃ならば、先手を打って奴に手傷を負わせられますっ!」

 ついに訪れた、選択の時だ。
そこで冒険者達の選んだ答えは・・・。

ダレイドを説得し、静かにこの場を離れる、であった。




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