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![]() 冒険者。それは『平穏なる日常』を捨てる代わりに『自由に羽ばたく権利』を得た者達の事である。 貼紙の依頼を完遂した際に貰える報酬で飯を食べている、 器用さと腕っ節の強さにかなり自信のある奴らだ。 怪物退治、宝探し、要人警護に商隊の護衛、港湾人足、更には下水道の掃除、ドブさらい、晩御飯の食材の仕入れ、ベビーシッター・・・恋愛の手助けをする事だってある。一旦引き受ければ、仕事は仕事として何でもこなしてしまう、頼りになる連中、それが冒険者である。 さて。 それでは、話をしよう。とある冒険者達の物語を・・・。 ■1 「はーっくちょん!」 アリアは何度目になるか分からないクシャミをした。 冒険者である彼女、ウィッチのアリアとその仲間達、サムライのジン、ウォーロックのライト、お伴のパンプキンヘッドのオード・・・パーティの面々は、馬車で移動していた。 手綱を握るのは、ジン。 もっとも、ジンは今、人ではなく人狼形態となっていた。 狼頭人身、しかし身体にもふかふかの体毛が生えている。 「あったかそうね」とアリア。吐く息が白い。 「実際あったかいのでござるよ」 「でもオルウェンに着く前に人間に戻ってよね。そうしないと、村の人、ビックリしちゃうから」 「そうだ。いっその事、巨大狼になれば良いんじゃないか?」とライト。 「村の人間は怖がるだろうが、ほら」と言いつつ、彼は荷物袋から首輪を出した。 「これを付ければ、魔獣使いの魔獣だと思ってくれるぞ。あとは私がその背に乗れば完璧だな」 「ライト、それ本気で言ってるの?」 「むろん冗談さ。はっはっはっは」 その発言に対しアリア。 「イア! インドインドインドインディア!」 軽いツッコミとして風の呪文を唱えた。 「うーわー」 ライトは巻き起こった強風で吹き飛び、姿勢を崩し、倒れこんでしまった。 「ちょっときつ過ぎたかな?」 冒険者達は今、街道を北へ北へと進んでいた。 ヒララギ山のふもとにある村、オルウェン。そこが彼らの目的地だった。 これだけではよく分からないので、時間をちょっとばかり遡ってみよう。 そう、それは2週間程前・・・。 冒険者の宿、レドラ亭。交易都市リューン近郊に位置する小さな宿屋で、アリアや他の冒険者達の滞在している拠点の一つである。 今回の件の始まりは、そこの壁の掲示板、コルクボードに貼られた貼紙からだった。 『雪の中に咲く幻の薬草の花を採取しに行く際の護衛をお願いしたい。 なお雪山探索に必要となる防寒具等は当方で用意致します。報酬は700spを用意しています。 オルウェンの村のダレイド』 「おや、その貼紙に興味を持ったのかい」 と宿、レドラ亭の親父。宿の経営者で皆の父親的存在でもある人だ。 「オルウェンと言えば、北の方の村だ。ここからなら2週間程で着く。・・・依頼人のダレイドさんは、まだ若いがちゃんとした男だ。仕事さえきちんとすれば、報酬は支払ってくれるよ。どうする?」 その発言を受けて、相談タイム。 「で、どうするでござるか?」とジン。 「ふむ。ダークエルフ解放には資金が必要だからな、どうせ何か依頼をこなさなきゃならなかったんだ。それがこれでも異存はない」とライト。 そして、ふよふよ宙に浮遊していたオードも、 「おいらは、皆様方の決定に従い、付いていくだけでやんすよ」と言った。 「そう・・・」アリアは仲間達の反応を見てから、心を決めた。 「親父さん、この依頼、引き受けます!」 「おお、そうかいそうかい。ほれ、これがオルウェンまでの地図だ」 「ありがとうございます!」 「なぁに、これが仕事だからな。それじゃ気をつけて行ってこいよ」 「はい!」 そんな訳で。 アリア達は北の村オルウェンに向かっていたのだ。 「ほら、もうすぐだから、変身解いて!」 「えー、でももう少し」 「駄目」 「分かったでござる」 変身を解くジン。身体を覆っていた銀色の毛が、一瞬で人間の皮膚に戻っていく。 ・・・ジンの身体が人のものに戻り、変身の解除が完了した。 ひゅーっと吹いてきた風が、身に染みる。 「ひえええ。寒い、寒いでござるよアリア殿っ!」 「当たり前でしょ! 私もライトもオードもそれに耐えて来たの。あとちょっとだから我慢して」 「うう。分かったでござるよ・・・」 ちなみに、それまでふよふよ宙に浮遊していたオードは、この寒さで凍ってしまい、馬車の床に落下していた。 「ちょっ、オードっ!」 「一旦休憩をとるでござるよ。魔法の呪文で炎の柱を立て、オードを溶かせば良いでござる」 あくまで冷静なジン。 「よし。私がやろう」とライト。 一行は道の脇の雪原に足を止めた。 「何か、燃える物はないか?」 ちょうどその時、おあつらい向きな物をアリアが発見した。 「あれなんてどう?」 それは倒れた灌木だった。 馬車を降り、しゃりしゃりと雪道を進む一同。 で。 「アイヤイヤイヤイヤイヤリーヴィーア!」と呪文を唱えるライト。 すると灌木の下から炎が上がり、巨大なたき火となった。 オードを炎であぶるアリア。近すぎず、遠すぎず、というのはかなり難しい。 「あ、あちちちちちち、熱い、焦げるでやんすっ」 辺りに良いにおいが漂う。焼けたかぼちゃのにおいだ。 「ごめんオード」謝るアリア。 「とりあえず、氷は溶けたでござるな」 ジンは動じない。相変わらずマイペースだ。というより鈍感なだけか。 「よし、それじゃ、再出発だ」とライト。 一行は街道に戻った。 ![]() |