■15

 その晩。冒険者達は村の宿屋に泊まった。
 「知らなかったわ! 暖かなベッドがこんなに恋しいなんて!」
 とベッドに倒れこんだアリアがしみじみと言った。

 一方、
 「ふかふかでやんすー!」
 ぽよーん、ぽよーんとベッドの上で飛び跳ねるオード。
 「しかし、ダレイド殿にとっては、これからが正念場でござるよ」
 「ああ、その通り。無理をしなければ良いが・・・」
 ジンとライトはそんな話をし、やがてそれぞれ床に就いた。

 ・・・ダレイドは机に向かい、採取してきたレドシラを鉢ですり潰し、幾つかの工程を経て、レベッカのかかっている病気の特効薬を作り出した。その晩、一睡もせず、ただひたすら彼の妹、レベッカが回復する様に、精魂込めて、その薬を完成させたのだ。

 早朝、ダレイドは誰ともなしに叫んだ。
 「やった!」
 窓のカーテンとカーテンの隙間から差し込む、朝の光が眩しい。
 しかしそんな事はダレイドにとっては問題ではなかった。
 「やったぞーっ!」
 思わず出したその声はダレイドの家中に響き渡った。
 「お兄ちゃん、声大きいよ」
 もぞもぞとベッドの布団から這い出してきたパジャマ姿のレベッカが、スリッパを履き、兄の様子を見に彼の部屋へ訪れた。
 と、特効薬が完成した事で張っていた緊張がぷつんと途切れたのか、ダレイドは椅子に腰掛けたまま、すーすー寝息を立てていた。
 「お兄ちゃん・・・」
 レベッカは、そんなダレイドの肩に、毛布をかけた。
 「ありがとう、お兄ちゃん!」

 そして数日が過ぎた。
 いよいよアリア達冒険者の出立の日だ。

 村の入り口。
 「ありがとうございましたー」と叫ぶダレイド。
 「ありがとーございましたー!」同じくレベッカ。血色も良いし、ふらついてもいない。すっかり元気になった様だ。
 ダレイドと回復したレベッカに見送られながら、アリア達を乗せた馬車はオルウェンの村を後にした。


Mission complete!



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